晋 萍 / jin_ping
経歴 |
1986 年 | 中国 四川大学 日本語学部 卒業 |
2002 年 | フェリス女学院大学大学院 文学研究科 修士修了 |
2004 年 | 拓殖大学大学院 言語教育研究科 博士課程単位取得退学 |
2005 年~ | 中国 上海海事大学 日本語学部 専任講師 |
研究テーマ
形態論における日中対照研究
学習院大学東洋文化研究所に招聘される期間中、
形態論における日中対照研究というテーマから、
指示代名詞と複合動詞にしぼって、研究を行う予定である。
1. 指示代名詞について、主に『東洋文化研究』56号(2010年3月掲載予定)の論文
「指示代名詞の中国四川方言における三分法(現場指示)の存在とその類型」
(安部清哉・晋萍共著)の継続研究を行う。具体的な内容は下記のようである。
① 指示代名詞の中国四川方言における現場指示の追加調査として、
同じような距離の可視不可視の調査をして、その結果について分析研究をする。
② 四川方言話者に対して行った現場指示調査と同じように、
両親も本当の上海生まれ育ちと北京生まれ育ちの人に対しても、
同じく調査を行って、その結果を分析研究する。
③ 中国国内における中国語指示代名詞研究、
研究誌『中国語文』『当代語言学』『方言』
等掲載論文の翻訳点検を行う。
④ 中国における日本語教育において、
日本語の「コ・ソ・ア」指示代名詞は初めの段階から導入されているにもかかわらず、
初心者から上級学習者に至っても、
指示詞の使い分けに大変難しい問題点が残されている。
その誤用は、異なる国の文化背景や認知方式にも影響されたのではないかと思う。
従来、中日指示代名詞に関する研究において、主に記述的な対照研究がなされている。
いわゆる、異なる言語におけるありのままの言語形式を比較することにより、
それぞれの異同を明らかにする。
これからは、従来の記述研究と違う視点、異なる言語の「形式」に比べ、
「認知方式」に焦点を当てて研究したい。
具体的には、中日両語において、「主観性」をめぐって指示に対する人間の認知方式を解明したい。
つまり、異なる国や文化を持つ人間が如何に周りの物事を認知し、
それを如何に位置付けているのかを研究する。
招聘される期間中は、日本における先行研究や資料を集め、分析考察を行う予定である。
2. 日本語の複合動詞とそれに対応する中国語の表現について研究する。特に文学作品において、
日本語の複合動詞を中国語に訳す場合、どのような表現形式が使用されているか、
どのような表現を使用するのがより正確でわかりやすいか、
などを研究したいと考えている。具体的には、次の五つの基準に従って、考察を行いたい。
① V1とV2の意味が中国語訳に反映されて、順番も維持されているもの
② V1とV2の意味が中国語訳に反映されているが、順番が逆になっているもの
③ V1の意味のみが中国訳に反映されているもの
④ V2の意味のみが中国訳に反映されているもの
⑤ V1とV2の意味が中国訳に反映されていなく、別の表現に訳されているもの
以上のように、形態と意味との二つの側面から、日本語の複合動詞とそれに対応する中国語の
表現形式を考察する。それに必要な日本の先行研究や資料などの基礎的情報を集めて、研究を行う計画である。